Craft Garden

1993年生まれのゆとり世代の僕が、アニメや映画、読んだ本の感想や、社会に対する不満などを書いてます。

『欲望のすすめ』/古谷経衡

評論家、著述家である古谷経衡氏の新刊『欲望のすすめ』(KKベストセラーズ)を読了した。

本書は、昨今よく耳にする「若者の草食化」に代表されるように、現在の日本人は本当に「欲望」を失ったのか。そのことを「若者論」と「歴史・戦争論」の二部構成で検証している。そこで本書を読んでの私の感想を書いていくことにする。

 

まずは「若者論」の方であるが、全くもって同意であり正しいと言い切れる内容であった。ではなぜそう言い切れるのか。それ私が現在20歳の若者だからである。

私は1993年12月生まれで、福岡市内の某私立大に通う20歳の男子大学生である。私の世代がどんな世代かと云うと、生まれたときにはすでにソビエト連邦はこの世から消えており、オウム真理教による地下鉄サリン事件時に生まれてはいたが、当時1歳で記憶にはない。ゼロ年代に入ってから小学校に入学し、小学2年のときに同時多発テロが起こり、テレビの中で飛行機がビルに突っ込む映像を見たことをなんとなく覚えている。そして先日の衆議院選挙で初めて国政選挙の選挙へ投票に行った。そんな世代である。

本書では「若者の草食化」「若者のクルマ離れ」「若者の持ち家離れ」といったものを否定している。

「若者の草食化」であるが、最近の若者の性欲が減退しているというのは、少なくとも私の周辺では嘘だ。男友達の半数程は一度は風俗へ行っているし(私は行ったことはないが)、私と同じゼミの親しいある友人は月に一度は風俗へ通い、行くときは何故か私に嬉しそうに「今日は風俗に行く」と話してくる。また、性行為の話を世間話程度にするし、もちろん私もその話に参加している。

「若者のクルマ離れ」であるが、これも嘘だ。確かに私たちの父親世代のように、車を趣味としてではなく、単なる移動手段としてしか見ていないのはそうかもしれないが、殆どの者が車を買いたくても買えないのだ。実際、私の周辺は私以外男女共に自動車免許を殆どが持っているし(私は現在自動車免許を取りに自動車学校へ通っている)、お金さえあれば車を買いたいと思っている。私自身はというと、車に関しては興味なく、電車移動が好きなため、車をほしいとは思わず、就職活動で有利に働くという理由だけで自動車免許を取りに行っているが、非常に珍しい部類だと思う。

そして最後に「持ち家離れ」であるが、はっきり言ってこれも嘘だ。少なくとも私の周辺では将来結婚したら家を持ちたいと話もするし、高級住宅街の横を通ったりすると「こんな家に住みて~」と話すものである。

本書はこれら3つのことを中心に、様々なデータを基に若者を分析しているが、実に正鵠を得ていると思う。

 

次に「歴史・戦争論」であるが、概ね同意できる内容であった。日本は侵略戦争をしていないという昨今の保守派の論客には違和感を感じる所があった(中学時代、半藤一利氏監修のDVDを見ていた影響もあるだろうが)。どう考えても先の大戦における日本は、持たざる国日本が、欲望の赴くまま、インドネシアの石油をはじめ、南方の資源を目的に始めた戦争だと思うし、大東亜共栄圏など後付けであると思う。結果として戦後、アジアの各国は独立し、インドネシア独立戦争では残留日本兵がインドネシア独立に貢献したことは史実であるが、それは結果論に過ぎないだろう。

しかし著者は日本は別に「侵略国家」でいいではないかと論じている。私も概ね同意である。確かに現在では侵略は悪と見做され、保守派はその史実を口にしたがらないが、当時は世界の国々、特に列強の国は侵略を悪と見做していなかったはずだ。19世紀半ばのアメリカで、ジャーナリストのジョン・オサリバンが提唱した、「神から与えられた明白なる天意」であるといった『マニフェスト・デスティニー』をアーロン・ヘイト・パルマーが推進し、アメリカが領土を西へ西へと侵略して拡大していき、日本に開国を迫ったように。

日本人は昔から決して無欲ではなく、先の大戦でも欲望の赴くまま戦い、多くの兵士がその欲望の塊であった大日本帝国のために戦った。実に誇らしいことであると私は感じる。

 

欲望の対象となるものは変わっていくだろうが、これからも人間から欲望というものが失せることは決してないだろう。

 

また本書の最後には、『だから日本はズレている』の著者で社会学者の古市憲寿氏と著者の対談も載っているが、意外と話が合っていて面白く必見である(以前の文藝春秋スペシャルでの対談も面白かった)。

 

若者は草食化していると思っている人にも、それに疑問を感じている人にも是非一読してほしい本であると感じた。

 

欲望のすすめ (ベスト新書)

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